第1回「一番安い施工会社」を選んだ管理組合が後悔した理由

第三者アドバイザーは見た!

修繕積立金には限りがあるため「少しでも工事費を抑えたい」と考えるのは当然です。
しかし、私が見てきた中には「価格だけ」で施工会社を選んだことで、結果として後悔の残る大規模修繕工事になってしまったケースもありました。

今回は、その一例をご紹介します。

※この記事では、実際に経験した複数の事例を基に、個人やマンション名が特定されないように再構成しています。

はじめに
このマンションには設計コンサルの立場で関わっていました。設計業務が完了し工事の範囲、内容が決まったところであり、これから施工会社を決める「業者選定」がはじまるところでした。

業者選定とは?

設計コンサルタントが作成した設計図書・見積条件をもとに、複数の施工会社から見積を取得し、施工会社を選定するプロセスです。

このマンションでも積立金不足に悩んでおり、少しでも工事費を安くしたいと考えていました。建物の状態が良ければ数年後に大規模修繕工事を先延ばしにすることもできましたが、今までの修繕が思うように実施されておらず、すぐにでも工事をしないといけない状態でした。
そのため、「とにかく安く…」の気持ちがすべての居住者にもあり、一番安い施工会社に決定しました。この施工会社は3社の中でもダントツに工事費が安かったのです。なぜか?
それは足場を使わない特殊な工法を採用していたからです。
「足場」は外壁回りの工事をするためには必ず必要な「作業床」です。これなしでは職人が外壁の工事をすることができないのです。しかも足場は総工事費の20%とも言われるほどコストの高い工事項目です。その部分がないのですから安い。当然皆さんが惹かれるのもわかります。

しかしながら、この一番安い施工会社は過去の施工実績や施工方法について、専門家として懸念を持っていました。その為、担当者はこの会社は絶対にやめたほうがいいと全力で止めましたが、聞き入れられないばかりか、「それは他社を推しているだけではないか、談合ではないのか!」と責められる始末。困っていました。

最終的に私たちは、このまま工事監理業務を続けることは責任ある立場として適切ではないと判断し、業務を退く決断をしました。
そうなると、工事を監理してくれる設計コンサルはいませんのでその後は、工事を客観的に確認する立場の専門家が不在となりました。

完了後にわかったことですが、この特殊な工法は作業員のみが外壁の状況を見ることができるということであり、管理組合の人は確認する術がないということです。だから仮に必要な工事を行っていなかったとしてもわからないということになります。実際、補修不足と思われる箇所が複数確認され、追加補修が必要になったと聞いています。

工事完了後、理事会の皆様は「あの時、専門家の話をもっと聞いておけばよかった」と後悔されていたそうです。なぜ設計コンサルが工事監理をやめてまで、一番安い施工会社にしないようとしていたことも、ここで理解してくださいました。

結局は一番安い工事費だったはずが、自分たちで補修不足となった部分を自費で補修することになり、結果として当初2番目に安かった施工会社の金額よりも高い工事費となってしまいました。

この事例で学ぶべきこと

今回のケースで問題だったことは「価格が安いこと」ではありません。
問題であったのは、

  • 工事内容を十分に理解しないまま価格だけで判断したこと
  • 専門家の助言を活かせなかったこと
  • 施工方法によりメリット・デメリットを比較せず施工会社のセールストークを鵜呑みにしたこと

です。

工事費(価格)は重要です。
しかし、それ以上に大切なのは「その価格で、どのような品質の工事が提供されるのか」を理解することです。
もし判断に迷う場合は、依頼している設計コンサルタントに納得いくまで説明を求めること、あるいは第三者の専門家に相談することも有効な選択肢です。

第三者アドバイザーから一言

現場では、「安いから悪い」「高いから安心」ということはありません。
重要なのは、その価格の根拠を理解し、納得したうえで選択することです。
「安かったから」ではなく
「納得して選んだから良かった」
そう思える大規模修繕工事になることを願っています。
管理組合の皆様が後悔のない判断をできるよう、このシリーズでは現場で学んだ教訓をこれからもお伝えしていきます。


GB English Summary

Choosing the lowest-priced contractor is not always the best decision in a condominium renovation project. In one case, a management association selected the cheapest proposal despite professional concerns about the construction method. After the project was completed, additional repairs became necessary because some defects had not been properly addressed. This experience demonstrates that understanding the quality, construction method, and technical risks behind a proposal is just as important as comparing prices.



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