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第1回 建物の見積書は本当に無料で作られている?

~「積算」という知られざる仕事~

「見積は無料です。」
私たちは普段、そんな言葉をよく目にします。
家電でも、自動車でも、リフォームでも、
「見積無料」
というのは当たり前のように感じます。
では、
数千万円、数億円にもなるマンション大規模修繕工事の見積書は、本当に無料で作られているのでしょうか。

実は、その裏には
積算(せきさん)」
という専門的な仕事があります。

積算とは?

積算とは、図面や現地調査をもとに、工事に必要な数量や費用を計算し、見積書を作成する仕事です。

例えば、
・外壁は何㎡あるのか
・シーリングは何mあるのか
・防水面積はどれくらいか

一つひとつの部材や面積、長さなどを図面から数え上げ、数量を算出します。そこへ材料費や施工費を積み上げていきます。

見積書は、電卓だけで作られているわけではありません。

積算にはいろいろな方法があります。
企業によって方法は異なりますが、代表的なのは次の2つです。

① 図面+現地調査

図面だけでは分からない部分を、実際に現地で確認しながら積算します。

メリット

  • 実際の建物に近い数量になる
  • 劣化状況も反映できる
  • 精度が高い

デメリット

  • 現地調査に時間と人件費がかかる

② 図面と写真だけで積算

図面と写真だけを使い、現地調査を行わず積算する方法です。

メリット

  • 工数(費用)を抑えられる
  • 遠方の物件にも対応しやすい

デメリット

  • 写真に写っていない部分や図面にない部分は、経験則で数量を判断することになり、その分精度が落ちる。
  • 工事が始まってから数量が変わる可能性が高くなる

実は「無料」ではありません

実は、積算だけを専門に請け負う会社も存在します。

私は以前、大規模修繕工事の積算業務を請け負っていました。また、企業の積算部で仕事をしていたこともあり、上記の①と②両方経験しました。

当然、その時は施工管理も、コンサルもせず、ただ「積算」だけをしていました。
もちろん、無料ではありません。

現地調査から数量拾い、見積書作成まで、1か月近くかかることも珍しくありません。

その費用は、数十万円。
建物規模によっては100万円を超えることもあります。

つまり、
積算そのものが一つの専門業務なのです。

では施工会社はどうしているのでしょう?

責任施工方式では、
施工会社が見積書を提出します。
しかし、
施工会社にも事情があります。

積算部門がある会社
自社で積算を行います。

とはいえ、
人件費は会社負担です。

受注できなければ、
積算費用はそのまま会社の負担になります。

積算専門部署がない会社
積算専門会社へ外注します。
もちろん、
その費用も会社負担です。

受注できなければ、積算費用だけが残ります。
だからこそ、
受注の可能性が低い案件では、積算にかけられる時間や費用にも限界があります。

設計監理方式では少し事情が違います

設計監理方式では、
設計コンサルタントが事前に

  • 現地調査
  • 劣化診断
  • 数量算出
  • 工事仕様

まで整理しています。

施工会社は、

その資料をもとに単価を入力する形になるため、
積算の負担は大きく軽減されます。

つまり、
同じ「見積書」でも、
作られるまでのプロセスは大きく異なるのです。

建築積算士から一言

私は建築積算士として、また大規模修繕工事の積算業務にも携わってきました。
積算は普段、表に出ることの少ない仕事ですが、工事金額や見積書の信頼性を支える重要な役割を担っています。
だからこそ、管理組合は「一番安い会社」という結果だけを見るのではなく、見積書がどのような根拠で作られたのか、その金額がどのように積み上げられたのかという視点にも目を向けていただきたいと思います。

建築積算士とは

建築物の工事費について、数量算出から工事費算定までを行う専門家です。(民間資格)

建築積算士の詳細はこちら(日本建築積算協会ホームページ)

このシリーズでは、建築積算士としての実務経験をもとに、見積書や工事費の仕組みを専門家の視点から分かりやすく解説し、管理組合の皆様が納得して判断できる知識をお届けしていきます。



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