第18回 湧水は、簡単には止められない

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~都市部のマンションにも地下水はある~

第三者アドバイザーは見た!

「湧き水」と聞いて、どのような場所を思い浮かべますか?

山、森、林。

自然豊かな場所で、岩の間からきれいな水が流れ出している風景を想像する方も多いのではないでしょうか。しかし、地下水は山の中だけにあるものではありません。

私たちが普段暮らしている都市部の地下にも、水は存在しています。

そして、条件によってはマンションの壁や床から、その水が浸み出してくることがあります。

あるマンションに理事会に行ったときのお話です。

マンションの顔に現れた異変

そのマンションでは、特定の場所にエフロレッセンスやカビなどの劣化が集中していました。

エフロレッセンスとは、コンクリート内部に含まれる水分が表面へ移動する際、成分が白い結晶となって現れる現象です。

それだけで直ちに危険というわけではありませんが、水分が移動している可能性を示すサインの一つです。劣化が発生していたのは、エントランスや共用廊下など、多くの居住者や来訪者が通る場所でした。

いわば、マンションの顔です。管理組合からは、

「目立つ場所にカビや白い汚れがあるので、大規模修繕工事できれいに直したい」

という要望がありました。しかし、表面を塗り直すだけで解決できる問題には見えませんでした。

崖を背負ったマンション

現地の状況と建物の図面を確認すると、このマンションが崖を切り開いた土地に建てられていることが分かりました。劣化が集中している場所は、ちょうど崖に面した側です。

建物の壁の向こう側には、空間があるのではなく、崖の土があります。

「崖を背中に背負っているマンションだな」

図面を見ながら、私はそう思いました。

地中には、雨水が浸透した水や地下水が流れています。崖に接する外壁には、建築時に防水や排水の対策が施されていたと考えられます。しかし、建物は年月とともに変化します。

コンクリートにひび割れが生じたり、防水層や排水機能が低下したりすれば、土中の水分や湿気が建物側へ移動してくる可能性があります。新築当時には見られなかった症状でも、長い年月を経て表面化することがあるのです。

見えている側から塞げばよい?

壁の内側へ水分が出てくるのであれば、マンション側から防水材を塗って止めればよい。一見すると、それで解決できそうに思えます。しかし、地下水の影響を受けている壁では、室内側から表面を塞ぐだけで解決するとは限りません。水は、止められれば別の場所へ回ることがあります。背面から水圧がかかっていれば、新しく塗った仕上げ材が膨れたり、剥がれたりする可能性もあります。また、水分を壁の中に閉じ込めることで、コンクリート内部の劣化を助長することが考えられます。

本来であれば、水が入ってくる側で防水する、地中の水を排水する、ひび割れや打継ぎ部を処理するなど、原因と水の経路に応じた対策を検討する必要があります。

ところが、このマンションでは、問題の壁の外側が崖の土の中です。外側から防水するためには、崖側の土を掘削するなど、大がかりな工事が必要になる可能性があります。立地条件によっては施工そのものが難しく、実施できたとしても多額の費用がかかります。

その後の検討は設計担当者へ引き継ぎましたが、費用の問題もあり、根本的な対策を実施することはできませんでした。

最終的には、水分を完全に閉じ込めにくい透湿性のある塗装を施す、対症療法にとどまったとのことです。

これは地下水を止める工事ではありません。表面の状態を改善しながら、内部の水分を外へ逃がしやすくするための対応です。

この経験から学ぶこと

マンションに発生する漏水や湿気の原因は、雨だけではありません。

給排水管からの漏水。

外壁や屋上からの雨水浸入。

結露。

そして、地中から影響を受ける地下水や浸透水。

同じように壁が濡れて見えても、原因によって必要な対策は大きく異なります。

特に地下水が関係する場合、水そのものを完全に止めることが難しいケースがあります。

そのため、次のような点を総合的に確認する必要があります。

・建物が建つ土地の形状や高低差
・壁の反対側が屋外なのか、地中なのか
・雨の後に症状が強くなるか
・エフロレッセンスやカビが発生している範囲
・ひび割れや打継ぎ部の状態
・既存の防水や排水設備の状況
・過去に実施した補修と、その後の再発状況

見えているカビや汚れだけを取り除いても、水分の供給が続いていれば、やがて同じ症状が現れます。

根本的な対策が難しい場合には、排水、水分を逃がす仕上げ、定期的な補修などを組み合わせ、建物と地下水が無理なく共存できる方法を考えることも必要です。

第三者アドバイザーから一言

自然の中で目にする湧き水には、きれいで爽やかな印象があります。しかし、建物にとって地下水は、簡単には止められない厄介な存在になることがあります。重要なのは、表面に現れた症状だけを見て、すぐに塗装や防水で塞がないことです。

水がどこから来て、どこを通り、なぜその場所に現れたのか。

立地条件、図面、劣化状況を確認し、水の経路を考えたうえで対策を選ぶ必要があります。また、根本的な解決が技術的または費用的に難しいこともあります。

その場合は、できないことを曖昧にせず、対症療法の目的と限界を管理組合に説明し、将来の点検や再補修まで含めて計画することが大切です。建物の周囲から水の気配が消えても、地下の水までなくなったわけではありません。地下水があることを前提に、その建物に合った維持管理を考える。それも、大規模修繕工事に求められる大切な視点です。


施工管理、大規模修繕コンサルティングの経験をもとに、現場で実際に起きた出来事や教訓を、管理組合の皆様に分かりやすくお伝えするシリーズです。

※一部の記事は、個人やマンションが特定されないよう、内容を再構成・匿名化しています。




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English Summary

When people hear the words “spring water,” they often imagine clear water flowing through a forest or mountain landscape. However, groundwater also exists beneath urban areas and can affect ordinary condominium buildings.

At one condominium built against a cut slope, efflorescence, mold, and other moisture-related deterioration were concentrated around the entrance and common corridors. Drawings and site conditions suggested that the affected wall was in direct contact with soil on the slope side. Over time, cracks, declining waterproofing performance, or drainage problems may have allowed groundwater or moisture in the soil to migrate through the concrete.

Simply sealing the visible surface from inside the building would not necessarily solve the problem. Water pressure and trapped moisture can cause new finishes to blister or peel, and water may find another route into the building. Ideally, the source, path, waterproofing, and drainage conditions should all be investigated.

In this case, access from the outside would have required extensive and costly work, so a fundamental solution was not feasible. A breathable coating was used as a practical treatment instead.

Groundwater problems cannot always be eliminated completely. When a permanent solution is technically or financially difficult, the condominium association should understand the limits of the selected treatment and plan for continued inspection and future maintenance.

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