荷物だらけのバルコニー

第17回 「うちはバルコニーの工事をしなくていい」

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~工事が始まっても片づかない荷物と物置~

第三者アドバイザーは見た!

大規模修繕工事の施工会社で、現場を担当していたときのお話です。

大規模修繕工事が始まる前には、居住者説明会や掲示物などを通じて、バルコニーに置いてある荷物を片づけていただくようお願いをします。

植木鉢、物干し台、収納ボックス、自転車、使わなくなった家具。なかには、大きな物置が設置されていることもあります。

事前の工事説明会では、工事が始まるまでに室内へ移動するか、不用品であれば処分していただくようお伝えします。

それでも、実際に工事が始まってみると――

荷物が、そのまま残されていることは珍しくありません。

工事が始まってから、一軒ずつ確認することに

バルコニーに荷物が残っていると、足場からバルコニーへ入っても作業ができません。

床の防水工事や外壁塗装、シーリング工事などを行うためには、施工範囲にある荷物を移動していただく必要があります。

そこで、対象となるお宅を一軒ずつ訪問し、改めて片づけをお願いします。

「これは室内へ移動できますか?」

「もう使っていないものであれば、この機会に処分していただけませんか?」

小さな物であれば、現場の作業員がお手伝いできることもあります。

しかし、大きな物置になると簡単には動かせません。

中身をすべて出し、場合によっては解体しなければならず、専門業者への依頼が必要になることもあります。その場合、撤去や処分が有償となる可能性もあります。

すると、よく返ってくるのが、

「自分では動かせません」

という言葉です。なかには、「なぜ置いてはいけないんだ」

と、お叱りを受けることもありました。

バルコニーは「自宅の外」でも共用部分

バルコニーは、その住戸の居住者が日常的に使用しています。

そのため、自分の家の一部だと思われやすいのですが、一般的にはマンションの共用部分であり、それぞれの住戸に専用使用権が認められている場所です。

自由に使用できる専有部分とは異なります。

特に、避難経路となる隔て板の前や、避難はしごの周囲に荷物を置くと、火災などの緊急時に避難を妨げるおそれがあります。

物置などの設置についても、マンションの管理規約や使用細則で禁止または制限されている場合があります。

そのため、まずは各マンションのルールを確認する必要があります。

規約上認められない物や避難上支障となる物については、工事を理由とした一時移動ではなく、撤去をお願いすることになります。

規約上問題がなく、工事後に戻すことが可能な物であっても、再設置する場所や避難経路への影響を確認しなければなりません。

「うちは工事をしなくていい」は通らない

荷物の移動をお願いすると、

「うちはバルコニーの工事をしなくていいから、荷物はそのままでいいでしょう」

と言われることもあります。

しかし、一人の判断で、その住戸のバルコニーだけを工事対象から外すことはできません。

バルコニーの床や外壁は共用部分です。

大規模修繕工事は、管理組合が建物全体の維持保全のために実施するものであり、原則として個々の居住者が工事の実施を選択するものではありません。

一箇所だけ工事を行わなければ、そこだけ劣化が残り、将来の漏水や外壁の不具合につながる可能性があります。

また、次回の修繕まで未施工部分を残せば、管理組合全体の負担が増えることも考えられます。

そのため、なぜ工事が必要なのか、なぜ荷物を移動していただかなければならないのかを、根気よく説明する必要がありました。

連絡が取れない外部所有者

さらに難しいのが、住戸の所有者がマンションに住んでいない場合です。

賃貸に出されている住戸では、実際に住んでいる方と所有者が異なります。

  • 物置が誰の所有物なのか分からない。
  • 居住者だけでは撤去を判断できない。
  • 所有者へ連絡しても、なかなか返事が来ない。

そのようなケースでは、管理会社を通じて何度も連絡し、対応方法を確認しなければなりません。

工事は進んでいるのに、その住戸のバルコニーだけ作業に入れない。

工事の工程は待ってくれません。

「これも現場の仕事」と分かってはいても、本来進めるべき施工管理の仕事が止まり、やきもきしたことを覚えています。

この経験から学ぶこと

バルコニーの荷物の片づけは、工事が始まってから考えればよい問題ではありません。

大きな物置や大量の荷物がある場合、移動や処分には時間も費用もかかります。

工事前には、次のような点を早めに確認することが大切です。

  • バルコニーに何が置かれているか
  • 管理規約や使用細則に反していないか
  • 隔て板や避難はしごをふさいでいないか
  • 居住者自身で移動できるか
  • 撤去や処分に専門業者が必要か
  • 外部所有者や賃借人への連絡が取れているか

説明会で一度伝えるだけで、すべての住戸が対応できるとは限りません。

アンケートや事前調査によって状況を把握し、移動できない世帯への対応や有償作業の範囲を着工前に決めておくことも必要です。

第三者アドバイザーから一言

大規模修繕工事では、工事の品質や工程管理だけでなく、居住者の協力を得るための準備も重要です。

バルコニーの片づけが終わっていなければ、職人がいても工事を進めることはできません。

「説明会で伝えたから大丈夫」と考えるのではなく、着工前に各住戸の状況を確認し、移動が難しい場合の対応方法まで決めておくことが、工事の遅延やトラブルを防ぎます。

バルコニーが共用部分であることや、工事への協力が必要な理由を、できるだけ早い段階から丁寧に伝えること。

一見すると単なる「片づけ」の問題ですが、実は大規模修繕工事を予定どおり進めるための大切な準備なのです。

施工管理、大規模修繕コンサルティングの経験をもとに、現場で実際に起きた出来事や教訓を、管理組合の皆様に分かりやすくお伝えするシリーズです。

※一部の記事は、個人やマンションが特定されないよう内容を再構成・匿名化しています。




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English Summary

Before major condominium renovation work begins, residents are usually asked to remove personal belongings from their balconies. However, even after repeated notices and briefing sessions, furniture, storage boxes, plants, and sometimes large storage sheds may still remain when construction starts.

Because balconies are generally common areas granted for exclusive use, individual residents cannot simply decide to exclude them from the renovation work. Items that obstruct partition panels, emergency ladders, or evacuation routes may also violate the condominium’s management rules or use regulations.

Large storage sheds can be particularly difficult to handle. They may need to be emptied, dismantled, or removed by a specialist contractor, sometimes at the resident’s expense. When a unit is owned by someone living elsewhere, contacting the owner and obtaining a decision can take even more time.

This experience showed me that balcony clearance should not be treated as a last-minute request. Early inspections, clear explanations, and advance arrangements for residents who cannot move items themselves are essential to keeping a renovation project on schedule.

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