~美しいデザインの裏に隠れていた修繕の難しさ~
第三者アドバイザーは見た!

あるおしゃれなマンションの大規模修繕工事に関わったときのお話です。
そのマンションは、外観だけでなく、廊下や共用部分まで洗練されたデザインで統一されていました。建物を調査していると、私は一般的なマンションにあるはずの「あるもの」が見当たらないことに気づきました。
それは、雨どい(竪樋)です。
屋上や屋根に降った雨水を排水する竪樋が、外壁や廊下のどこにも見当たりません。しかし、雨どいが設置されていないわけではありませんでした。
建物のデザインを損なわないよう、雨水を流す配管が壁や天井の中に隠されていたのです。
配管が正常に機能し、雨水を排水できている間は、特に問題ありません。ところが、このマンションでは、共用廊下の天井から水が漏れる現象が複数の場所で発生していました。
漏水はどこから来ているのか
廊下の天井から水が漏れていれば、一般的には、まず上階の床や防水層、外壁からの浸入を疑います。
しかし、漏水が発生した位置や雨どいの配管経路などから、天井内に隠された雨水配管から漏れている可能性が考えられました。
配管の継ぎ目に不具合があるのか。
配管自体が破損しているのか。
それとも、別の場所から水が回り込んでいるのか。
原因を特定するには、天井の中を確認しなければなりません。
ところが、このマンションには、そのための点検口も設けられていませんでした。
配管は確かに天井の中にあります。
しかし、外から見ることも、手を入れて確認することもできないのです。
まずは「見るための工事」が必要に
そこで、廊下の天井に点検口を新設し、天井内の状況を確認することになりました。
ただし、点検口を設ければ、それだけですべて解決するわけではありません。
小さな点検口から確認できるのは、配管の一部分に限られます。
漏水箇所が離れた場所にあった場合や、壁の中に隠された竪管に不具合があった場合には、天井や壁の一部を撤去して、さらに広い範囲を調査しなければならない可能性があります。
そして、原因を確認した後には、
- 配管のどこを修繕するのか
- 天井や壁をどこまで撤去するのか
- 修繕後の仕上げをどのように復旧するのか
- 今後の点検をしやすくするために点検口を残すのか
- 建物のデザインをどこまで維持するのか
といったことも検討しなければなりません。当然ながら、調査、撤去、修繕、復旧のそれぞれに費用がかかります。
このマンションでは、漏水箇所を直すだけでなく、隠された配管を今後どのように維持管理していくかという問題にも向き合わなければなりませんでした。
この経験から学ぶこと
建物の配管や設備を壁や天井の中に隠すことで、すっきりとした美しい空間をつくることができます。
しかし、建物は完成したときが終わりではありません。
年月がたてば、配管や防水、外壁などには劣化や不具合が発生します。
そのとき、点検や修繕が難しい構造になっていると、原因を調査するだけでも天井や壁を撤去しなければならず、時間と費用がかかることがあります。
国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでも、マンションごとに形状や仕様が異なるため、それぞれの建物に応じた修繕計画を作ることの重要性が示されています。
新築時の美しさだけでなく、
「どこから点検するのか」
「壊れたときにどう直すのか」
「将来、どのくらいの費用がかかるのか」
という維持管理の視点も、建物には必要です。
第三者アドバイザーから一言
デザイン性の高い建物では、配管、設備、排水口などが目立たないよう、壁や天井の中に納められていたり、意匠性を重視した、目立ちにくい器具が使われていたりすることがあります。
それ自体が悪いわけではありません。
問題は、不具合が発生したときに点検や修繕ができる仕組みまで考えられているかどうかです。
大規模修繕工事では、建物を新築時と同じ姿に戻すことだけが正解とは限りません。
必要に応じて点検口を設ける、将来交換しやすい納まりに変更するなど、維持管理のしやすさを高める工夫も検討する必要があります。
もちろん、機能だけを優先して、その建物らしいデザインを損なってしまうのも望ましくありません。
美観を守りながら、点検や修繕のしやすい建物へ改善していくこと。
特にメンテナンス性を高めることで、次回の大規模修繕工事や、将来トラブルが発生した際の余計な費用を抑えられる可能性があります。
普段は見ることのできない部分を確認できる大規模修繕工事のタイミングだからこそ、建物のデザインと将来の維持管理を両立させる方法を考える。
それも、大規模修繕工事の大切な役割ではないでしょうか。
施工管理、大規模修繕コンサルティングの経験をもとに、現場で実際に起きた出来事や教訓を、管理組合の皆様に分かりやすくお伝えするシリーズです。
※一部の記事は、個人やマンションが特定されないよう、内容を再構成・匿名化しています。


English Summary
During a major repair project at a stylish condominium, I noticed that something commonly seen on apartment buildings was missing: the rainwater downpipes.
They had not actually been omitted. To preserve the building’s clean appearance, the rainwater pipes had been concealed inside the walls and ceilings.
This caused no problems while the pipes were functioning properly. However, water leakage had begun appearing at several locations in the common corridor ceilings.
Based on the locations of the leaks and the routes of the concealed pipes, the rainwater drainage system was considered a possible cause. However, there were no access panels through which the inside of the ceiling could be inspected.
The first step was therefore to install access panels and investigate the concealed areas. Even then, sections of the ceilings or walls might need to be removed, depending on where the problem was located.
Investigation, removal, repair, and restoration would each involve additional costs.
Concealing pipes and equipment can create a clean and attractive appearance. However, buildings must also be inspected, maintained, and repaired over many years.
Major repair projects provide an important opportunity to preserve a building’s design while improving accessibility and maintainability. Considering future inspections and repairs can also help prevent unnecessary costs when the next project or unexpected problem occurs.

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