~マンションの共用部分と費用負担~
第三者アドバイザーは見た!

あるマンションで、大規模修繕工事に合わせてエレベーターの更新を検討したときのお話です。
大規模修繕工事では、外壁塗装、防水、シーリングなど、建物の外部を中心とした修繕を行うのが一般的です。
一方、エレベーターも一定の年数が経過すれば、部品の交換や設備全体の更新が必要になります。
ただし、エレベーターの更新には多額の費用がかかります。そのため、大規模修繕工事とは別の時期に、長期修繕計画に基づいて予算を確保し、更新工事を行うマンションも少なくありません。このマンションでは、大規模修繕工事の検討に関連して、エレベーターの修繕や更新についても話し合うことになりました。
すると、1階にお住まいの方から、こんな質問が出ました。
「私はエレベーターを使っていないのに、その工事費も払わないといけないの?」
いわゆる、
「エレベーターを使わない1階の住戸も、費用を負担するのか」
という論争です。
使っているかどうかで決まるのか
1階に住んでいれば、普段の生活でエレベーターをほとんど使わない方もいるでしょう。
そのため、
「自分が使っていない設備の費用まで負担するのは納得できない」
と感じる気持ちも理解できます。
この疑問は、エレベーターの更新工事だけでなく、毎月支払う管理費や修繕積立金についても、たびたび話題になります。しかし、マンションの共用部分にかかる費用は、原則として、各区分所有者が実際に使用している回数によって決まるものではありません。
エレベーターがマンション全体の共用部分として定められていれば、1階に住んでいるか、上階に住んでいるかにかかわらず、そのマンションの区分所有者として費用を負担することになります。
マンションは建物全体を共同で所有している
分譲マンションを購入すると、自分の住戸である「専有部分」だけでなく、廊下、階段、屋上、外壁、エントランス、エレベーターなどの「共用部分」についても、一定の持分を所有することになります。
つまり、マンションは自分の住戸だけを単独で所有している建物ではありません。
区分所有者全員で、建物と設備を共同で所有し、維持していく仕組みになっています。
例えば、上階に住んでいる方が1階の共用廊下をあまり使わなかったとしても、その修繕費を負担しなくてよいとは限りません。反対に、1階に住んでいる方がエレベーターを使用しなかったとしても、マンション全体の共用設備であれば、その維持や更新に必要な費用を負担するのが原則です。
このとき、全区分所有者が同じ金額を均等に負担するとは限りません。区分所有法では、規約に別段の定めがない限り、共用部分の費用は持分に応じて負担することが原則とされています。
多くのマンションでは、管理規約に基づき、専有部分の床面積などに応じて管理費や修繕積立金の負担額が決められています。
「使わないから払わない」では維持できない
マンションには、日常的に使う人が限られている設備や場所もあります。しかし、すべての費用を実際の使用回数に応じて負担しようとすると、管理は非常に複雑になります。
「屋上には行かないから、防水工事費は払わない」
「階段を使わないから、階段の修繕費は払わない」
「自分の住戸から遠い場所だから、その廊下の修繕費は払わない」
こうした考え方が広がれば、マンション全体を適切に維持することが難しくなってしまいます。共用部分を健全な状態に保つことは、安全な生活だけでなく、マンション全体の資産価値を守ることにもつながります。
エレベーターを直接使っていない区分所有者にとっても、設備が適切に維持されていることは、マンション全体の価値に関わる問題なのです。
このとき、どう説明したのか
このマンションでは、管理会社の担当者と一緒に、エレベーターが共用部分であることや、管理規約に基づいて費用を負担する仕組みについて説明しました。
大切なのは、
「決まりだから払ってください」
と一方的に伝えることではありません。
なぜ使用の有無にかかわらず費用負担が必要なのか。その費用が何に使われるのか。
どのような基準で各住戸の負担額が決められているのか。こうした点を丁寧に説明し、区分所有者に理解していただくことが必要です。
この経験から学ぶこと
マンションで生活していると、自分の住戸や、自分が日常的に使用する場所だけに目が向きがちです。
しかし、分譲マンションは、建物全体を区分所有者で共同して管理する仕組みです。
自分が使っているかどうかだけではなく、
「マンション全体を安全に保つために必要か」
「建物全体の価値を維持するために必要か」
という視点で考えることが大切です。
なお、マンションの構造や管理規約によっては、一部の区分所有者だけが使用する「一部共用部分」として扱われたり、費用負担について特別な定めが設けられていたりする場合もあります。
実際の負担方法については、そのマンションで現に有効な管理規約を基本として、細則や別表などの関連規定も併せて確認する必要があります。
第三者アドバイザーから一言
「使っていないのに、なぜ払うのか」
これは、1階の居住者にとって素朴で自然な疑問です。
だからこそ、管理組合や管理会社は、法律や規約だけを示すのではなく、マンションを共同で所有する仕組みについて、分かりやすく説明する必要があります。
一方、区分所有者も、自分の住戸だけではなく、建物全体の所有者の一人であることを忘れてはいけません。
大規模修繕工事では、多額の修繕積立金を使います。
全員がすべての工事を直接利用するわけではありません。
それでも、建物全体を適切に維持し、安心して暮らせる環境と資産価値を守るために、区分所有者全員で支えていく。
それが、マンションという共同住宅の基本的な考え方ではないでしょうか。
施工管理、大規模修繕コンサルティングの経験をもとに、現場で実際に起きた出来事や教訓を、管理組合の皆様に分かりやすくお伝えするシリーズです。
※実際の費用負担は、マンションの構造や管理規約などによって異なります。個別のケースについては、管理規約を確認し、管理会社やマンション管理士などの専門家へご相談ください。
※一部の記事は、個人やマンションが特定されないよう、内容を再構成・匿名化しています。


English Summary
During discussions about an elevator renovation at a condominium, a resident on the first floor asked a common question:
“Why should I pay for an elevator that I never use?”
It is understandable that someone living on the first floor may rarely use the elevator. However, condominium expenses are generally not determined by how often each owner uses a particular facility.
When an elevator is designated as a common part of the building, its maintenance and renewal costs are generally shared by the unit owners in accordance with the condominium’s management bylaws.
Owning a condominium unit also means holding an interest in the building’s common areas and facilities, including corridors, stairways, roofs, exterior walls, entrances, and elevators.
This does not necessarily mean that every owner pays exactly the same amount. In many condominiums, management fees and repair reserve contributions are calculated according to each unit’s ownership share, often based on its floor area.
There may also be exceptions depending on the building’s structure and bylaws. Therefore, the actual allocation of costs should always be confirmed in the condominium’s governing documents.
A condominium is jointly maintained by all its unit owners. Even when an owner does not personally use a particular facility, maintaining the building as a whole helps protect safety, daily living conditions, and property value.

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