第16回 築50年、自主管理マンションが抱えていた課題

•

~管理費を抑えるだけでは、建物を守れない~

第三者アドバイザーは見た!

築50年を超える、あるマンションに関わったときのお話です。

そのマンションは、管理会社へ日常の管理業務を委託せず、管理組合が中心となって運営する「自主管理」を続けてきました。

マンション管理には、大きく分けて、管理会社へ業務を委託する方法と、管理組合が自ら管理する方法があります。

管理会社へ委託すれば、当然ながら委託費用がかかります。

一方、契約内容に応じて、

  • 管理費や修繕積立金の会計管理
  • 建物や設備の点検手配
  • 清掃や保守業者との調整
  • 理事会や総会の運営支援
  • 修繕工事に関する業者との連絡
  • 管理規約や各種届出に関する支援

など、マンション運営に必要な多くの業務を任せることができます。

では、自主管理なら費用がかからないのでしょうか。

必ずしも、そうではありません。

自主管理は「自分たちで経営する」ということ

自主管理では、管理会社への委託費用を抑えやすいというメリットがあります。

しかし、管理会社が担っていた仕事を、管理組合が自ら行わなければなりません。

清掃、設備点検、消防設備などの法定点検、会計、総会運営、修繕工事などを外部へ依頼する場合でも、まず業者を探して比較し、契約する必要があります。

契約後も、

「依頼した業務が適切に行われているか」
「提示された金額は妥当か」
「不具合へ適切に対応しているか」

といったことを管理組合が確認しなければなりません。

つまり、自主管理とは、何も依頼せずに済む方法ではありません。

管理組合がマンションを一つの事業体として運営し、必要な業務を自ら判断していく管理方式です。

住民同士の協力体制が整い、建築、会計、法律などに詳しい人が継続的に関われるマンションでは、適切に運営されている例もあります。

しかし、役員の交代や居住者の高齢化によって、これまで担ってきた人がいなくなれば、管理の質を維持することが難しくなる場合もあります。

築50年を超えて現れた課題

このマンションは、昭和40年代に建てられた建物でした。

現在のマンションと比べると、建物や住戸内には、建設当時の生活様式を反映したさまざまな特徴が残っていました。

例えば、

  • 洗濯機置場がバルコニーにある
  • 浴室が現在一般的なユニットバスではない
  • 和式トイレが残っている住戸がある
  • 旧耐震基準で設計されている

などです。

ここで注意したいのは、古い仕様が残っていることと、マンションの管理不全は同じではないということです。

洗濯機置場、浴室、トイレなどは、住戸の専有部分に含まれる場合があり、原則として各区分所有者が改修を検討するものもあります。

一方、建物の耐震性、共用配管、防水、外壁などは、管理組合が建物全体の問題として検討しなければなりません。

また、浴室からの漏水であっても、原因が専有部分の設備にあるのか、共用配管や建物側にあるのかによって、責任と費用負担が変わります。

まずは原因と管理区分を確認する必要があります。

修繕と性能向上は同じではない

管理組合としては、居住者の要望を聞きながら、古くなった建物を少しずつ改善していきたいと考えていました。

しかし、ここでも大きな問題になるのが費用です。

劣化した外壁や防水を元の状態へ戻す「修繕」と、現在の生活に合った設備や性能へ改善する「改良・性能向上工事」は、必ずしも同じではありません。

例えば、

  • 耐震性能を高める
  • 古い配管を全面的に更新する
  • バリアフリー化する
  • 断熱性や省エネ性能を高める
  • 共用設備を現在の生活に合わせて変更する

といった工事には、通常の修繕とは別に多額の費用がかかることがあります。

長期間にわたって建物を使い続けるには、傷んだ部分を直すだけでなく、どの性能を、いつ、どこまで向上させるのかも考えなければなりません。

高経年マンションほど長期修繕計画が重要

長期修繕計画は、管理会社へ委託しているマンションにも、自主管理マンションにも必要です。

特に築年数が進んだマンションでは、外壁や防水だけでなく、配管、電気設備、エレベーター、耐震性など、検討しなければならない項目が増えていきます。

過去の修繕履歴や建物の現状を確認し、

  • 今後、どの工事が必要になるのか
  • いつ実施するのか
  • どのくらいの費用がかかるのか
  • 現在の修繕積立金で足りるのか
  • 修繕と性能向上のどちらを優先するのか

を整理する必要があります。

計画を作って終わりではなく、調査結果、物価、工事費、居住者の要望などに合わせて定期的に見直すことも重要です。

国土交通省の管理計画認定制度でも、長期修繕計画の作成や見直し、修繕積立金の設定などが、適切なマンション管理を判断する重要な項目になっています。

参考:国土交通省「マンション管理計画認定制度」

この経験から学ぶこと

自主管理そのものが、建物を劣化させるわけではありません。

管理会社へ委託していても、管理組合がすべてを任せきりにしていれば、必要な修繕が遅れることがあります。

反対に、自主管理でも、区分所有者が協力し、必要な部分で専門家を活用しながら、適切に維持管理しているマンションもあります。

問題は、管理方式の名称ではありません。

建物の状態を把握し、必要な点検や修繕を行い、そのための資金を準備できる体制があるかどうかです。

築年数が進むほど、住民の経験や善意だけでは判断が難しい問題が増えていきます。

そのようなときは、すべてを管理会社へ委託するか、自主管理を続けるかという二者択一で考える必要はありません。

会計、長期修繕計画、建物調査、工事監理など、専門性が必要な業務だけを外部へ依頼する方法もあります。

第三者アドバイザーから一言

管理会社への委託費用を抑えることは、管理組合にとって大切な判断です。

しかし、管理費を抑えることだけが、良いマンション管理ではありません。

必要な点検や修繕を先送りすれば、その場では費用を抑えられても、劣化が進んだ後に、より大きな工事費が必要になる可能性があります。

築50年を超えたマンションでは、

「今、いくらかかるか」

だけでなく、

「この建物を、あと何年、どのような状態で使い続けるのか」

という視点が必要です。

自分たちでできることと、専門家へ任せるべきことを整理し、建物の将来と必要な費用を見えるようにする。

それが、高経年マンションを守るための第一歩ではないでしょうか。


施工管理、大規模修繕コンサルティングの経験をもとに、現場で実際に起きた出来事や教訓を、管理組合の皆様に分かりやすくお伝えするシリーズです。

※一部の記事は、個人やマンションが特定されないよう、内容を再構成・匿名化しています。




問い合わせはこちら
理事会様用初回無料相談はこちらから

English Summary

During my involvement with a condominium more than 50 years old, I encountered the challenges of maintaining an aging building under a self-managed system.

Self-management can reduce the fees paid to a property management company. However, the condominium association must arrange inspections, accounting, meetings, repairs, contractor selection, and contract supervision by itself.

This particular building still reflected the living standards of the time when it was constructed. Washing machines were placed on balconies, some units retained traditional bathrooms and squat toilets, water leakage had occurred repeatedly, and the building had been designed under Japan’s former seismic standards.

Older features do not automatically mean that a condominium is poorly managed. It is also necessary to distinguish between private-unit improvements and problems involving common areas, such as exterior walls, waterproofing, shared pipes, and structural safety.

As buildings age, repair alone may not be sufficient. Condominium associations must also consider performance improvements, future usability, and how these projects will be funded.

Self-management itself is not the problem. What matters is whether the association has an effective system for inspections, long-term repair planning, financial preparation, record keeping, and professional support.

For aging condominiums, identifying what residents can manage themselves and when outside expertise is needed is an essential step toward protecting the building’s future.

Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です